ある元三重大学生のブログ: 2021.06

2021年6月3日木曜日

【車の安全性】JNCAP(自動車アセスメント)を詳細分析

自動車を購入する際に安全性を考慮する方も多いでしょう。その際に、メーカーではなく中立な機関が評価した評価があると役立ちます。

日本では、JNCAPとの名称で自動車安全性評価が公表されています。

 そして、今年も、自動車の安全性能を評価・公表する「自動車アセスメント」の結果が発表されました。(例年発表は5月下旬ごろのようです)

さて、この評価は、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が一体となって行なっています。

自動車販売店で購入した(=試験用に不正に改造されていない)自動車で試験を行います。


結果は、星の数で表現され、最高評価は★5つです。

★5つはファイブスター賞、その中で最高得点の車にはファイブスター大賞が贈られます。

普段は、この星の数やせいぜい項目別の点数を見る程度です。多くのサイトでもそこまでの記載にとどまります。

しかし、より詳細な結果がウェブサイトには示されており、今回はそちらを考察します。

例として、ヤリス(トヨタ自動車)を見てみましょう。

ファイブスター賞を受賞しており、試験結果が良かったことが分かります。

まずは通常読む範囲から。

サイトには、下記のような動画が掲載されています。


出所:独立行政法人自動車事故対策機構ウェブサイト

また、下記のような点数概要が掲載されています。
出所:独立行政法人自動車事故対策機構ウェブサイト(以下、画像はすべて出所同じ)

ここまでは、多くのウェブサイト、動画で取り上げられており、大半の方はここまでの情報で満足してしまいます。

しかし、本題はここから。もう少し掘り下げてみましょう。
このページには「結果pdf」というボタンがあり、より詳細な資料を見ることができます。

例えば、衝突安全性では、衝突後の燃料漏れやドアが人力で開けられるかと言ったことが評価されていることが分かります。

ヤリスの場合、どちらも良好ですね。下記画像参照。


後部シートベルトの非着用警報では、点数を落としていることが分かります。

衝突回避についての評価を見てみましょう。
これを読むと、先ほどの動画は、試験のごく一部にすぎないことが分かります。
上記画像は「対歩行者:夜間[街灯あり]試験結果」です。
①試験は、速度を変えてかつ各速度で複数回行われている。
時速30km、35、40・・・60kmまで各3回ずつ行われていますね。

②ファイブスター賞でも回避できない場合もある
意外なのが、回避失敗がファイブスター賞の車種でもあることです。
時速60kmでは、△となっており、ブレーキ作動はあったものの衝突してしまっています。

当該車種の場合、夜間歩行者で時速60kmだと衝突回避が不確実だと分かります。


実は、この試験、衝突回避できなかった動画は非公開です。
人形がはねられる動画は衝撃が大きく、車のイメージ・売上に直結するからでしょう。

海外での同様の試験(ユーロNCAPや米IIHSなど)では、そのまま掲載したり、当たった瞬間で停止にしたり様々のようです。

また、速度も最大60kmでそれ以上はありません。
これでも年々最大速度を上げています。

業界からの要望と思われますが、100kmくらいまでは実施してほしいですね。
衝突試験も同様で、さらに高速での試験を実施してほしいです。

それにしても試験条件も想像以上に複雑です。ただ実験するだけではなく、必要であれば事前の慣らし運転を100kmくらいの距離まで認めたりしていますね。新車状態と走行経験がある状態で結果が変わる車種があることが示唆されます。


結果詳細を読んで考えたのは、
・衝突回避など予防評価は「限られた条件」でしかない
雨や逆光、服装の色、自転車といった条件での評価は未実施です。

・自動車メーカーの対策
結果は公表されますし、安全への消費者の関心も高く、低評価は売り上げにマイナスです。
もちろん公表によって各メーカーが安全性向上に力を注ぐよう誘導する効果は大きいです。しかし、試験の詳細は公表されています。公表はせざるを得ないですが、結果的に試験対策ができてしまいます。
現実は置き去りにして、試験に特化した安全性設計を行っている可能性は否定できません。


・車がもったいない?
YOUTUBEに公表されている動画には車がもったいないというコメントが見られます。しかし、この試験により安全性向上がはかられており、相当な数の事故が防がれている可能性が非常に高いです。当然車両も多く事故を免れています。車両だけで考えても数台の実験で済んでいるので総合的には大きなプラスです。
試験がなければ、消費者は公平な安全性を知る機会を奪われ、メーカーも力をいれないでしょう。

また、メーカー側も自社試験を行っているでしょうからこの動画だけ見てもったいないというのもどうかと思います。

それにしても、衝突試験をした車はどうしているんでしょうね。分析用にメーカーが欲しがるのではないかと思うのですが、ディーラーで他のお客さんと同じように購入していますので無料で上げるわけにもいかないでしょうし・・・

・向上は著しい
特に衝突回避は性能向上がすごいです。
数年前の動画を見ると、現在よりも低い速度でさえ回避できていません。
高級車と思われる車種でも、現在の一般車レベルに達していないのは驚きました。

それにしても、試験結果動画を編集しただけの動画の再生回数が多いですね。原典の再生回数は少ないのに。多くの人に知ってもらうのには良いですが、よその実験で結構稼いでいる投稿者もいるのでしょうね。