10年ほど前の本ですが、初めて読んでみました。
村上氏の小説では短めで、構成も
高校・大学時代の回想→現代→当時の友人を訪ねる
(そこに、灰田と灰田による緑川の話が途中で入り込む。)
という分かりやすいものでした。
・色について
アカ、アオ、黒、白の4人+主人公(田崎つくる)
色の3原色で言えば、黄色がない。(光の3原色は赤、緑、青ですが・・・)
途中の挿入話として灰田(黒+白=灰)、緑川(緑+青?)がでてきます。
どちらも原色ではありません。
田崎を除く主要人物のみが原色を与えられます。
ちなみに「木元 沙羅」という名前になんとなく、黄色や緑、白を感じました。
木=き(黄色)、緑
サラノキ=花が白色
田崎つくるは色がないと言っていますが、どこか田崎真珠から白色をイメージしました。
このようにみると、全体的に白色系が多い構成なのかもしれません。
・殺人犯について
白を殺害した犯人は、本文では明かされません。
ネットでは、白の父親説が上位に出てきます。
しかし、これは賛成できません。
警察の捜査で未解明と村上氏がしている以上、犯人はそもそも想定されていないのではないでしょうか。
登場人物に犯人がいるはずだとしている考察も見かけましたが、そんなことはないでしょう。
ま、アパートに住んでいれば防犯カメラ映像で分かりそうですがね。
それにしても、かつて仲が良かった田崎つくるに一切捜査が及ばなかったのも現実味に欠けますね。
・黒について
主人公田崎を、好きだったと言っておきながら薄情すぎやしませんか。
当時は仕方なかったとしても、白の葬式も教えず15年以上も音信不通で放置。
登場人物内でシロの殺害犯を強いて言うなら、彼女かも。
彼女の語る「真実」は果たして真実なのか?
・ネットの存在感が薄すぎる
時代設定が2005年あたりであるにもかかわらず、固定電話に電話をするシーンが多すぎて昭和と錯覚します。携帯電話やメールが普及しているはずの時代なのに。これも村上氏の世界線なのでしょうか。
・灰田と緑川は一体何だったのか?
何も言わずに去っていった灰田はさすがに現実離れし過ぎかなとおもいます。当然、田崎が携帯に連絡するということもなされず蒸発。
また、その後の展開には一切無関係なトークンの話の緑川。これではただの異常者では?
・中の上とは・・・
開業医の娘、名大教授の息子、彼らを上回る富裕層の主人公田崎。
本文では、世間の中の上くらいに全員が属するグループだったとあります。
これで中の上なのでしょうか?この部分は疑問を持たざるを得ません。
村上氏の感覚が一般感覚とずれているのかもしれません。