ある元三重大学生のブログ: 2019.09

2019年9月21日土曜日

映画「天気の子」

※以下、内容や結末に関する内容が含まれます。


【総評】
悪くはないけど、映画館料金で見るほどではない。
ジブリには及ばない。中二病的な面が大きい。
米アカデミーでの受賞は、最も良くて部門賞。おそらく受賞なしと予想。


【良い点】
・作り込みがすごい。映像がとても綺麗
・意外な結末。シンプルながら、ありそうでない。
・一定の社会性(気候変動など)

【悪い点】
・音楽が一部くどい
・スポンサーが前面に出すぎる
・イマイチ物語に入り込めない。何かが足りない。

【私の意見】
①結末
意外な結末と聞いていたので、鑑賞後なるほどなあと思いました。

しかし、唸らされるものではないですね。さすがに現実乖離が大きすぎます。
東京が水没すれば、地下鉄、地下電線、上下水道など都市機能を失うことになります。しかし、不自由なしに暮らしている。

好意的に解釈すれば「人間は適応能力があるんだ」となるのでしょうが違和感が拭えませんでした。

②村上春樹との関連
「ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)」が序盤で複数回画像に写ります。村上春樹が翻訳を担当した本です。

ネット上で見かけないのですが、この映画で私は村上春樹「1Q84」を想起しました。
あの代々木ビルのらせん非常階段。そこを上ると異世界への入口がある。

この設定は「1Q84」で女主人公が首都高速の非常階段を降りることに始まり(異世界へ)、昇ることで終わった(元の世界へ)ことと酷似します。

異世界への入口にはこういう設定が多いんでしょうか?

③社会性
これはアカデミー賞でも評価対象になると思われます。
止まない雨、豪雨、異常気温は気候変動(地球温暖化)を思い起こさせます。

記録的な雨の降り続ける東京は決してフィクションではありません。
あり得る話です。

気象予報士(荒木健太郎気象研究所研究官)が監修者としてエンディングロールに出てきますので、雲の描写も現実的だったような気がします。
「天気の子」監督と雲研究者が語る異常気象 日経サイエンス 新海誠氏×荒木健太郎氏

一方で、疑問が拭えない部分も多いです。

気象の観点で言えば、日照不足は相当に深刻なはずですが、食糧不足の気配はありません。ニュースで少し触れているシーンがあるくらいです。
「東京のみの局地的現象なので食糧生産は問題ないのだな」と自分を納得させながら観ていました。まさか食糧不足で日清のラーメンだったとか笑
特別警報とかの領域を超えてますね。

さらに、父母がいない状況の中3と小学生が、アパートに住み続けているというのは不自然です。
公的支援を受けている気配もなく、年齢詐称してマクドナルドでアルバイトしている始末。金銭目的で中3がアヤシイ店で働く寸前でした。児童売買に等しいような・・・
病院のソーシャルワーカー等は何をしていたのでしょう・・・。警察が連行するまでは児相職員が「二人きりじゃあねえ」とのセリフのシーンがあるのみです。
実際には、児相や生活保護などの制度があるのでこういうことにはならない(はず)ですが。

また、拳銃を拾うという設定も違和感を持ちました。あの怖いお兄さんに奪われて射殺されていた恐れもあります。追い詰められた状況下であっさり撃ちますが、撃ち方も何で知ってんの?

また、ジャーナリスト男が誘拐犯として疑われるから帰れと車内で男主人公(少年)に言うシーン。この直前に警察が少年たちの部屋を訪ねています。
誘拐事件ともなれば大変なことですので、当然張り込み対象でしょう。ノコノコやってきて会っていれば即その場で逮捕ではないでしょうか。

結局終盤で、ジャーナリスト事務所を令状もなしに刑事が訪ねてきただけでした。刑事は勝手に中に入って不法侵入ですねw

また、月給3000円で男主人公は雇われていましたが、なかなかの重罪でしょうね。未成年との雇用関係な上に、低賃金で住み込み(監禁と疑われるおそれも)とは労基署どころか警察案件です。


④スポンサー
日清食品、ソフトバンク、JR東日本など様々な企業がスポンサーになっているようです。しかし、これらの描写が興ざめ。

日清ラーメンは出すぎですし、サントリーもどれだけプレモルやらボスやら映すんだよと思って現実に戻ってしまいます。

しかも、JR東日本は線路を主人公に線路を走らせるという場面を出されて結構社内で問題になっている可能性も・・・
サントリーも未成年に飲酒を勧めるシーンがあり怒ってそうですね。
さらに、マクドナルドも児童労働(国際的には深刻な問題)のイメージを持たれかねません。

⑤編集・BGM
ブツリとブラックアウトする編集は嫌いではありません。
適切なものなら、変に凝るより潔くて好きです。

BGMは盛大すぎますね。無理に盛り上げようとしてませんか。もったいないです。
雨の音は圧巻です。これは映画館だったことでより楽しめました。

最後のシーンは、男主人公しゃべりすぎです。一言でよかった。
エンディングロールの前に、エンディングロール概要があるのは面白かったです。

家出の理由は気になりませんでしたが、そういえば、あの生き物みたいな雨粒はなんだったんだ!?