ある元三重大学生のブログ: 2023.07

2023年7月16日日曜日

映画「君たちはどう生きるか」

※ネタバレを含みます。

 

映画「君たちはどう生きるか」。

映画館で観てきました。

結論から言えば、映画館で観る価値はあります。

ただし、高校生以上でないと理解が難しいかもしれません。

(R指定はないです。音のみのキスシーンが、おかえりなさいから音2回の1回あるだけ。)


とにかく、絵が素晴らしい。

ディズニーをもってしても、不可能な芸術の領域です。

音楽は、久石譲氏の音楽(悪くないが特徴もない)や米津玄帥氏の歌(今までの歌と雰囲気は同じ)で良いですが新鮮味はありません。

音響も、収録に行ったんだろうなぁというリアルな鳥の鳴き声や足音です。


私が観たときは、ガラガラで2割くらいの観客でした。

信じ難いことに公開3日目の日曜日です。宣伝なしなので空いていたのかもしれません。

混雑前に早めの鑑賞をおすすめします。


内容としては、宮崎作品で最後()と言われるとそれにふさわしい内容でした!


事前公開はあの鳥のポスターくらいですよね。

あの鳥は、重要ではありますが、意外にも主題ではありません。

渋い雰囲気でそれかよ!という印象ですね。

口の中に目がありますがストーリー上、正しい描写です。


「崖の上のポニョ」では映画評論家から水の表現が絶賛されました。

今回は、火の表現が素晴らしく、中心となっています。


鳥と火が重要キーワードの映画です。

正直なところ「火の鳥」という題名の方がまだ良かったと思います。

題名「君たちはどう生きるか」はストーリーに関係しません。

正確に言えば、出てはきますが、本そのものが出てくるだけで何ら重要な役割は果たしません。どこか強引なシーンでカットシーンでも不思議ではありませんでした。

宮崎監督が影響された本というのは分かりますが、題名にしたのはまずかったですね。


全体的にこれまでの宮崎作品の総括となっており、「千と千尋の神隠し」に似ているとか同作のお父さんだろとか、この場所って「カリオストロの城」「トトロ」だろとか、「天空の城ラピュタ」の雲では?などなど盛りだくさんです。

さらに高畑勲監督の作品の気配もかなりあります。そもそも主人公の少年真人は「火垂るの墓」を想起させます。

また、村上春樹の作品を思わせるファンタジーな部分も大きいですね。


とにかく、絵が素晴らしいです。1コマ切り取って額縁に入れて飾りたいシーンが沢山ありました!


あと、もののけ姫で出てくる「こだま」に相当するキャラも可愛いですね。グッズ販売したら売れそう。

(いや、これ「すみっコぐらし」では?空中に浮かんでいくシーンでは住友林業の「きこりん」だろとツッコミましたが・・・。両社から訴えられないといいですね笑)






出所:住友林業ホームページ


ストーリーは、終盤1/3程度が強引で残念でした。

想像するに、かなりカットシーンも多い映画ではないかと思います。

・冒頭で空襲警報と思わせて火事でした。

→本当は空襲だったが、ウクライナ情勢などで火事に変更した可能性。

あるいは、宮崎監督の意向で空襲としたくなかった?

周囲の人物のふるまいからも空襲の気配が大きく、戦時中の東京という状況からも純粋な火事とは考えにくいです。

ただ、空襲シーンはありません。戦闘機も一切出てきません。病院(にしては広範囲?)が燃えるシーンが出てきます。なぜ火事としたのかは議論がありそうな気配。

その他として・・・

・主人公の少年は、初めて鳥がしゃべっても一切驚かず、追い返そうとする。

・下女たちは容姿が人間離れしており不気味。また、なぜ1名が重要シーンまでついてくるのか謎。

・「下の世界」の墓は誰の墓なのか謎。主人公が墓の主を呼び出してしまう?ものの、なぜか助けに来た人が火で輪を書くだけで収まる。

突然大波が来て映画「インターステラー」かよとツッコミたくなる。

・父の新妻はなぜ不思議の世界へ行ったのか?出産をそこでしたいのか?(終盤唐突に正気に戻っています)

・いきなり継母をお母さんと呼ぶ主人公に違和感。間に何か欲しい。助けに行くのは人として素晴らしいが義理は特にないはず。

・実母は人間ではなかった?

・積み木のシーンで、突然数秒だけ雑な説明画像を挟む意味

・母の叔父は、主人公を跡継ぎにしたいのか、助けたいのか、元の世界に戻したいのか全くはっきりしない。

・最終シーン近くで、鳥の王が積み木を素早く積むがだれも止めずに全員フリーズ→滅亡

・結末を考慮すると、当初40分くらいを使う現実世界シーンが長すぎでは?

・結末が、ちょっとくらい余韻あるだろうと思わせて、東京に戻りますで終わり。いきなりブルースクリーン→エンディング。なぜブルースクリーンを挟むのか何か意味があるのか?

題名から、生きる意味や方向を主人公の少年が得て終わりという展開かと思いきや、ファンタジー世界からの脱出で一段落してオシマイ。


???という間に幕引きが急速に図られ、しっかりした展開なら3部作くらいになりそうな展開です。何らかの事情で2時間にさせられたのでしょうか。

前半で欲張りすぎてるんですよね。


映画は、

①面白くて短く感じる

②つまらないので長く感じる

のどちらかですが、今回は

面白いけど長く感じる

という非常に珍しい経験をしました。

宮崎駿監督の素晴らしさと老い?を感じる作品です。


そして、今後も、この映画に関して「隠された意味」「君たちはどう生きるかの怖い真実」などと扇動的な動画投稿で一儲けしてやろうという勢力も出てくるでしょうが、惑わされず冷静にいきたいものです。