2025.1.17付け日本経済新聞(電子版)で「高層建築の固定資産税評価額、算定方法巡り最高裁で弁論
」という記事がありました。
誰も記事にしていないので、独自主張をしますと、
もしかしたら、リート(高層ビルを多く保有するものに限る)にとって上昇の機会になるかもしれません。
飽くまでも可能性ですが…
概要として
・高層ビル(下層と上層で構造が違うもの)の固定資産税の下がり方が緩やかすぎる
・本来は、もっと早く税額が低下する基準を採用すべき
と三菱UFJ信託銀行が主張しているものです。相手側は大阪市・広島市です。
【もし、最高裁が信託銀行側の主張を認めるとどうなるか】
固定資産税が大幅に低下することになります。
翌日1.18付け同紙では、1棟で最大11億円程度の差があるとのこと。つまり、税額で1棟あたり年間1500万円程度です。
これは、保有物件1棟あたりです。
また、場合によっては、遡及して返還を命じる可能性もあり莫大な還付金が発生することもあり得ます。
そして、訴訟対象の物件だけにとどまらず日本全体の高層ビルに同様のことが発生することも考えられます。
今後の高層ビルの固定資産税は安くなり、さらにこれまでの固定資産税の差額分が還付されるということもあり得ます。
そこで、気になるのがリートです。
高層ビルを多数保有するリートもあり、想定外の利益が計上される可能性があります。
法令上利益を分配する必要があるため、増配の可能性もあります。
(税還付があっても、リート全体からみたら大きいのか小さいのかという疑問は残ります。)
特に、都心(=高層ビルが多い)のオフィス系リートは利益が大きいでしょう。
住宅は固定資産税の軽減があり相対的に税還付の恩恵は小さいと思われます。
また、高層ビル(下層と上層階で構造が違う)という条件があります。
そのため、地方に物件を多く保有するリートでは、高層ビルが少なく恩恵が小さそうです。
注目したいのは、
「この判決がマイナスになることはない」ということでしょうか。
・三菱UFJ信託銀行が勝訴
高層ビル全体の税金が安くなるかも。税還付があるかも。
・自治体側が勝訴
これまでと変わらない
の2択になりそうだからです。
もちろん様々な要因でリート価額は変動しますので、今回の裁判だけに限ればの話ですが。
参考
(固定資産税の下がり方)
もう少し、固定資産税の下がり方について書いていきます。
固定資産税は評価額✕税率(1.4%+都市計画税0~0.3%程度)で計算されます。
これを見ると、
評価額を下げればいいじゃないか
と思いがちです。
もちろんそうなのですが、評価額の算出方法は決まっており、実勢価格と比べてもかなり安くなる場合がほとんどです。
見落としがちなのが、
減価償却です。
これは、建物の建築年数に応じて評価額✕経年補正率(=減価償却率)で計算されます。
簡単に言えば、古い建物ほど評価額が下がる=固定資産税も安くなるということです。
当初の評価額は固定され、それに「建築年数に応じた数値」を掛け算することでどんどん評価額は下がっていきます。
下限は評価額の20%です。
ところが、この「建築年数に応じた数値」は
建物の構造によって異なります。
国の定める減価償却に沿っているのですが、
木造・軽量鉄骨・鉄骨・鉄筋コンクリートといった構造別になっており
下がり方にかなり差が出るのです。
(例)
木造:20年くらいで下限20%に達する
鉄筋コンクリート造:50年くらいで下限20%に達する
グラフにすると分かりますが、非木造はゆっくり下がるので税額もゆっくりとしか下がりません。結果として取り壊しまでの総税額は相当な差が出ます。
今回の裁判は、高層ビルでよくある構造(下層と上層階で構造が違う)で、税額がゆるやかに下がる減価償却を適用しているのはおかしいという主張です。
(自治体側は下層=頑丈な鉄筋コンクリート造、上層=下層よりは頑丈ではない鉄骨造でも上層階は下層階のおかげで成り立っているという主張のようで妥当性はありますね。)
とにかく、固定資産税は木造がお得な制度になっており、大手チェーン店では大きなお店も木造にして節税しようとする例もあります。(公式には言いませんが、おそらく木造にする大きな動機になっています。)
最近では、木造の高層ビルも話題になっていますね。
これも公式には言いませんが、節税が売り文句になっている可能性が高いです。
というわけで、高層ビルを多く保有するリートを購入するか迷うところですね。
リート指数連動型ETFでもいいですけどね。
2025.2.17に最高裁判決がどう出るか、注目しています。